ドクターへの進学について情報をまとめていきます。
あらゆる情報は全て作為的でアンバランスです。博士号の価値は「博士号取得者が語るべき」ともいいます。しかし、博士号取得者が博士を貶めることは、7年間の自身の生き方を自己否定することです。リアルな世界で決してありえないでしょう。生存者のバイアスも相当にかかります。相当親密な中になって、それでも酔った勢いでポロっと漏れるくらいでしょう…
そうした情報の中で、ネット情報や私見をまとめました。
真偽は貴方が判断してください。
進学する理由
まず、進学するモチベーションについて以下のようになるかと思います。
・就職より研究を続けたい
・今の研究が楽しくて仕方がない
・企業でも研究をするためには博士号か必要だ!
・学位(博士号)が欲しい
・名誉が欲しい
・研究者として世界で活躍したい
・出世したい
・博士卒の割合が年々上がり、最低限持っていなければいけないものになってきている。(引用:https://sites.google.com/site/swopp2010phd/summary民間企業就職者の声より)
一つずつ検討してみましょう。
まず、Ph.D神話とPh.Dの価値について述べます。
刷り込み教育
研究室の飲み会で、お酒が入った指導教官が度々、以下の説法をしていました。
日本は昔からPh.Dの価値が評価されない。アメリカではPh.Dの価値は名声・給料ともに非常に高い。日本はアメリカを後追いする政策を取ってきたから、いずれ、Ph.Dを持たない技術者は相手にされなくなる。だから、ウチの研究室で博士後期課程を取得したほうが将来、社会の役にたつことができる。
By 指導教官
博士後期課程の学生が多数在籍する研究室のHPを拝見すれば、大抵似たような文言が記載されているかと思います。こうした呪文を唱えられた経験はありませんか?
これに対して、ネット・社会的事実・私見・伝聞を以下に述べます。
A1.アメリカがスタンダードでなくなっている可能性がある。
博士の価値について第三者がブログに投稿していましたので、一部引用させていただきます。
筆者は渡米してから10年を迎えようとしているが、アメリカでそのようなPhDへの優遇を実際に経験したことはない。それどころか、PhDだから優遇されたという経験者に会ったことすらない。むしろ、アメリカでもPhDとnon-PhDの境界はどんどん曖昧になってきているように感じる。ひとつの証拠として、欧米の製薬系の企業の求人の例を紹介しよう。これら企業の求人欄の学歴・職歴の要件では最近、「博士号(PhD)」または「修士号(MS)プラス企業経験3年以上」または「学士(BS)プラス企業経験5年以上」などと記載されているケースが多くなってきている。今やPhDとnon-PhDとの違いは質的なものではなく、研究(むしろ実験?)を始めてからの年数といった量的な差だという認識に変わってきている。(中略)そういう点では、欧米がようやく日本に追いついてきたとでも言えそうだ。
あくまで、ある分野のある特殊な業界の事例を恣意的に切り取った情報かもしれません。私も、アメリカの製薬系の求人を確認する程の元気はありませんでした…
本気で検証するのであれば、簡単にできると思われますので挑戦してみてください。
しかし、ある意味当然の結果でないかとも思います。技術を持つヒトがいればいいのです。ドクターだろうが高卒だろうが、できるヒトはできるし、できないヒトはできないのです。
同時に、大学の博士後期課程に在籍していたのは、脱落しなかった日本人と多くの外国人でした。そのうち、ほんとに優秀な方もいる一方で、過去の遺産で学位を習得される方もおり、能力には大きな分散があったように感じます。加えてPh.Dは永久資格であり、該当者はどんどん増えていきます。かつては、ある程度の能力を保証していたのかもしれません。しかし、人数が増加した結果、価値はどんどん低下してきているというのが実情かもしれないですね。
A2.これからもPh.Dは増加する方向にある。
平成25年4月8日に提出された、自由民主党における教育再生実行本部からの提言の中に、以下のような項目があります。
2.イノベーションを生む理数教育の刷新
1.博士号取得者を欧米先進国並の年3.5万人に倍増、真に優秀な学生が学べる環境づくり
平成24年現在の博士号取得者が約1.6万人(引用:高等教育局大学振興課, 平成24年度博士・修士・専門職学位の学位授与状況,(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/07/27/1299723_08.pdf)ですから、単純に2倍強まで増加させる心積もりですね。新卒ドクターの希少価値は、5年後に半分になってしまう模様です。
受け入れ先と出口の問題
研究者として博士を採用できる企業は、研究できる余裕、社会経験のない人間を再教育できる余裕が必要です。現状、余裕のある裕福な企業の総数は増加する見込みはありません。
しかし、大学は国が決めた数値目標を達成しないと運営交付金が減額されるので,必死でPhDを増やそうとするのではないでしょうか(類似の事例があります。『ポストドクター等一万人支援計画』で検索、検索!)。ちなみに、現在でさえ、微々たる奨学金でM1の段階から既に博士後期課程進学に向けて学生を雁字搦めにしているのではないかと思われる大学が既に出てきています。
貴方の進学は誰の評価になるか?
これまで以上に、博士後期課程の学生数と学位授与者数が物理的に業績としてだけでなく、指導教官の学内での評価に直結するはずです。優秀なセンセイほど全力で勧誘を実施するでしょう。一方で指導体制は変わりません。むしろ、国立大学で若手の先生が、任期付きでどんどん採用されるなど、研究と教育の最前線でのゆとりのなさを感じます(朝日デジタル:http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/22/labor-japanese-uni_n_13137908.html)。こうした条件下で、あくまでも邪推ですが、修士の延長の研究どころか,雑用だけ、指示を受けるだけ、卒業生が残した研究をまとめるだけ、で学位を取得する粗悪なドクターが増える気がします。PhDの社会的希少価値はこうしてどんどん低下していくのではないでしょうか?
現在は修士卒がある程度はレアとはいえ、リクナビ・マイナビが営利対象にできるくらいのパイがあり、研究職以外の道や中小企業が気軽に採用できるようになっています。一昔前は修士でさえ高学歴で採用の敷居が高い状態であったことを鑑みれば、博士も同様の流れになるのでしょうか。つまり、今後は高い教育(?)を受けた博士を企業が安価に雇用できる、つまり、買い叩けるようになる可能性もあります。
A2-邪推 博士号取得者倍増は日本人を対象にしていない可能性があります。
真に優秀な学生が学べる環境づくりの一環で、留学生30万人計画が立案されています。この点から、「博士号の取得者を倍」は日本人ではなく外国人を対象にしている可能性があります。
実験系の研究室では、馬車馬のように学生がスクリーニングをかけて、絨毯爆撃によって驚くべき成果を見つけている分野が案外多い印象をうけます。そういった意味で、大学院を重点化して修士取得者を増やすことは、従順で安い労働力を放り込む意味で大成功を収めました。加えて、修士卒は(平均的に…)そこそこの就職先が用意されています。
一方で、『ポストドクター等一万人支援計画』によるPh.Dの増加は教授の労働力の増員としての面では成功したかもしれませんが、卒業後の出口戦略に失敗しました。未だに補助金を投入したり、キャリア支援を実施したり、大きな負債となっているようです。
そこで、あくまで私見ですが、留学生30万人計画を以下のように邪推してしまいます。
大学を運営していく上で、博士後期課程の学生が必要ですが、日本人のドクターの就業支援やアカデミアの道を補助金等で支援することは、現在進行形で高く付いています。そこで、海外の留学生を補助金で集め、実験・学生指導させることで研究成果を出し、その後、母国に送り返します。この結果をもって、大学の労働力を増やし業績を得て、産学官の連携による企業への還元サイクルを回そうというのではないでしょうか。
長期的に経済的収支だけを見れば、不良債権になりかねない日本人の学位取得者を増やすより、留学生へ奨学金を出したほうが安上がりでしょう。実際、既に日本の大学のPh.D取得者をみると、あながち間違っていないのではないかと感じます。日本国から奨学金を貰って悠々自適な研究室生活を送る外国人がなんと多いことか…また、優秀な外国人の博士後期課程の学生に指導を受けて巣立っていく修士の学生も少なくないです。
技術や研究への価値観は過去に時間と資金を膨大に投資してきた結果の産物です。研究室での人間関係を通じてノウハウや価値観が伝承され進歩していきます。留学生も同様にノウハウや価値観を入手していきます。では、ノウハウを学んだ彼らが帰国したらどうなるか?基礎研究が日本の強みだと言われてきましたが、今後はどうなるのでしょうか…
まあ、将来の化学や大学の授業料、少子化対策、若者の就労支援よりも、現在の団塊の世代の再就職の待遇や年金や社会保障のほうが日本にとって遥かに重要で議論する価値のある問題ですから、さしたる問題ではないですよね!
あなたへの直接の影響として
なにより、学位の価値という視点で考えたとき、あなたと同じ(若しくはそれ以上の研究室で)教育を受け、かつ二ヶ国語以上使いこなすドクターと就職・就業において競争しなければならないのです。多くの相手は、国費留学生として、金銭的な余裕があなたよりあるかもしれません。闘い抜く自信はありますか?
この結果、企業は日本人のドクターをさらに買い叩けるようになるのではないでしょうか…
A-3正直な教授の言葉
学会の懇親会でお酒が入ったとき、旧帝大の先生が、
『Ph.Dなんてアカデミックの登竜門に上るための入場券でしかなくて、それ以外に一切価値がない。必要なら社会人になってから取りにこればいい。ウチの研究室では社会人ドクターは受け入れるけど、学生の君たちには、その覚悟がないなら就職を勧める』
と、所属の学生の前で言い切っていました。
Ph.Dの価値についてはここまでにしておきます。
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