理系の研究室の選び方①
研究室配属において失敗した項目と、再び研究室を選択するならば重視すべき項目を挙げます。配属前の懸念と、配属後に重大な問題になる事項の乖離は案外、大きいです。肉体的な問題は何とかなっても、物質的に如何ともしがたい問題もあるのです。そして、希望通りの配属が叶った場合、現実とのギャップに目を逸らして無茶してニッチもサッチも行かなくなります。以下の視点が、あなたの研究室選択の参考になれば幸いです。
A.お金に関する事項
1.消耗品の自己負担
研究には消耗品を利用しますが、研究室によっては自己負担です。
毒物や劇物、生物に強い作用を示す化合物の合成に必須の特殊なゴム手袋は実費でした。教授はHPやメールで安全に実験を行なうよう指導した証拠を残していましたが、学生は年次を進むにつれ素手、無白衣であり、黙認していました。
印刷費も実費でした。自身の卒業論文等の推敲の自己負担は腑に落ちます。しかし、研究室や教授の実績にしかならない特許申請の推敲や、論文の本文やSIの最終確認のための膨大な印刷物も実費でした。年間で数千-万円ほどの自腹でした。
2.学会のお金(学会会員登録費用・発表費用・交通費・宿泊費)の自己負担
同じ授業料を負担する同一専攻の学生でも研究室ごとに学会に対する待遇が違います。
大学と教授の業績を宣伝する為に、半ば参加を強制される場合もある学会ですが、当然、お金が必要です。食費や新幹線代や宿泊費まで全額負担して貰える研究室がある一方で、発表費用からすべて自己負担になる研究室もあります。まだ、国内であれば飛行機を使っても可愛いものです。あなたが、ハワイやシンガポールの国際学会に研究室の代表として自己負担で参加できるほど裕福であるならば、気にする必要はない項目です。しかし、多くの学生にとって負担は大きいハズです。
3.教授のお金に関する価値観
教授と価値観を合わせられないと辛いです。
教授に金銭的負担について相談したところ、以下のような回答がありました。「奨学金を借りればいい。成果が出れば返済は免除されて全額丸儲け。さらに、学会発表・論文・特許取得の実績は、よい就職に直結して、あっという間に元が取れる。安い投資である」、と。
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私の主観ですが、今振り返れば、これは投資ではなく投機or捨て金(自己満足)でしかありませんでした。就職活動は人間力とその時代の経済状況に左右されます。修士では論文や学会発表が大きな決めてならない場合が多い印象を受けました。
(少なくともうちの研究室では)業績の有無より、卒業生が残した結果の補足検討を『PDCAサイクル』とやらを『ゆっくり』回しながら実験してきた人達の方が、新しい活性化手法を提唱して、意地と根性と力業にて、あらゆる基質・ルイス酸・添加剤を検討して新しい反応を開拓した人よりも臨む進路を手にしていました。
B.学問と業績に関する事項
1.配属生として実験マシーンになるか、研究見習いになるか
教授の方針によって研究活動の在り方が大きく異なります。『論文よんで知識を付けても無駄であるとにかく実験することが大切』と我武者羅に朝から深夜まで実験させるスタイルと、実験と並行して基礎知識習得と議論の課程を重視して勉強会を行なうスタイルで大きく分かれます。事前にどちらの研究室が自分に合うか考え、調査しておきましょう。
2.論文の方針
教授の方針によって論文の作成方法が異なります。
論文の草稿を書く経験ができる研究室、実験データだけ採らせて教授がすべて書き上げる研究室、色々あります。自分がどこまで携わりたいかまで考えて選ぶと良いでしょう。
3.論文の著者
論文のFirst authorを一律で教授に統一する、若しくは、最も貢献した学生にするなど先生ごとに個性がでます。また、研究の核に直接関わっていなくても、少し検討に参加した学生が著者に加わる場合もあります。
一方で、高度な政治的配慮が取られる場合があります。『博士後期課程に進学するなら
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First authorにシテアゲルケド』という駆け引き、学内外で恩をつくる・権威を借りるために研究に関与していないセンセイを共同研究者にしている場合があります。
もちろん、就職するなら一切関係ない項目ではあります。しかし、自分の研究にこだわるのであれば、希望する研究室の過去10年分ほどの論文の著者を調べることをお勧めします。博士後期課程に進学していない学生の論文はことごとくFirst authorから外れている、同一の研究室でないにも関わらず同一大学のセンセイの名前が入っているなどの場合、業績を自身の立身出世のためにしか考えていない指導教官である可能性があります。
続く